地方独立行政法人大阪産業技術研究所 - 当法人は、(地独)大阪府立産業技術総合研究所と(地独)大阪市立工業研究所が統合し、平成29年4月1日にスタートしました。研究開発から製造まで、企業の開発ステージに応じた支援を一気通貫で提供し、大阪産業の更なる飛躍に向け、大阪発のイノベーションを創出します。

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プラスチック成形工学研究室

射出成形を中心とした熱可塑性プラスチックの成形加工に関わる技術開発、ならびに二軸押出機や混練機を用いたコンパウンディングやポリマーブレンドにより、耐候性や導電性などの優れた機能を有するプラスチックの創製を行っています。また高分子の高次構造と成形品の耐熱性との関連性に代表されるような基礎と実用性能とのリンクを目指した先進的な研究やモノマー含浸法による炭素繊維強化熱可塑性樹脂の開発も行っています。その他、新製品の開発研究、成形不良対策、物性試験・流動性試験・促進耐候性試験、成形品内部構造の解析、コンピュータを用いた流動解析(CAE)などについても対応しています。


担当者

 ・武内 孝     総括研究員 研究室長(兼務)
 ・東 青史     主任研究員
 ・籠 恵太郎    主任研究員
 ・垰 幸作     主任研究員
 ・桑城 志帆    研究員
 ・山田 浩二      研究フェロー

対応領域

業   界:プラスチック製品製造業、プラスチック製品を使用するあらゆる産業

素材・技術:熱可塑性プラスチック、エンジニアリングプラスチック、繊維強化プラスチック、ナノカーボン複合材料、射出成形、押出成形、リアクティヴプロセシング、コンパウンディング、ポリマーブレンド、材料物性評価・分析、金型内流動解析、微細構造観察

研究内容

光安定剤を含む相溶化剤を用いた高耐候性ポリマーブレンドの開発

 ポリプロピレン(PP)とポリアミド(PA)を組み合わせたポリマーブレンドは、強度と耐衝撃性を兼ね備え、様々な分野で使用されています。このポリマーブレンドが屋外で使用される場合、紫外線による光劣化などが生じるので、製品には耐候性が必要とされます。
 ポリマーブレンドの光劣化では、一つのポリマー相で生じた劣化生成物がもう一つのポリマー相の劣化を引きおこすことが知られています。本研究では、そのようなポリマーブレンドに特徴的な光劣化を抑制するため、光安定剤を含む相溶化剤を作製してポリマーブレンドに添加し、耐候性の高いポリマーブレンドの開発を行いました。

ナノカーボン材料の局在化による高機能複合樹脂の開発

 カーボンナノチューブ(CNT)をはじめとするナノカーボン材料は、導電性や電磁波吸収性などの特性を樹脂に付与するナノコンポジット素材として用いられてきています。また近年、ナノグラフェンなど新規ナノカーボン材料も合成、生産されてきており、それらを用いた複合樹脂はユニークな特性を有するものとして注目されています。
 非相溶性の樹脂をブレンドすると相分離が生じますが、このような系にナノカーボン材料を添加すると、樹脂の組み合わせにより、一方の樹脂相、若しくは樹脂界面にナノカーボン材料が局在化する現象が起こります。それによって、局所的にナノカーボン材料の濃度が大きくなり、極少量の添加でナノカーボン材料に由来する特性が発現、向上する場合があります。
 本研究では、この性質を利用して、高機能複合樹脂の開発を目指しています。例えばポリカーボネート(PC)とポリスチレンのブレンドにCNTを添加すると、CNTはPCに局在化して、光を透過しつつ導電性を有する樹脂ができました。

非晶性プラスチックの高次構造と耐熱性の関係に関する研究

 プラスチック成形品の耐熱性向上は、用途範囲の拡大に非常に重要です。耐熱性を向上させるにあたって、高分子の構造と耐熱性の関係に関して古くから研究されていますが、非晶性プラスチックにおける高次構造と耐熱性の関係についてはいまだ未解明な部分が多く残されています。
 本研究では、高次構造として分子配向ならびに自由体積(高分子鎖間の空隙)に着目し、耐熱性(荷重たわみ温度)との関係について研究しています。

ラマン分光法を用いた射出成形品の高次構造解析

ポリスチレン(PS)やPPなどの射出成形品のウェルドライン周辺における分子配向状態をレーザーラマン分光法で評価し、以下の知見を得ました。
・樹脂温度、射出速度などの主要な成形条件によって配向度は大きく変化しました。
・成形品の部位によって配向状態は著しく変化しました。
・アニーリング(成形品の内部応力を除去するために行われる熱処理)によって分子配向が緩和する様子を実際に観察できました。

同時重合プロセスを用いたアクリル樹脂の強靭化

アクリル樹脂は、剛性が高く加工性にも優れるため、ディスプレイ材料や建築材料など幅広い分野に使用されていますが、他の高分子材料に比べて脆いため、き裂が進展しやすく材料内部に存在する小さな欠陥から大規模損傷に繋がりやすい材料でもあります。そこで本研究室ではアクリル樹脂の強靭化に関する研究を行っています。具体的には、重合様式の異なるウレタンとアクリルモノマーを同時に重合させるプロセスを用いて、強靭なアクリル樹脂の創製に成功しました。また、形成された構造観察や破面などき裂周辺の観察を行うことで、本ポリマーブレンドの高次構造と強靭化機構の関係を明らかにしました。

サンドイッチ射出成形機を用いた新たな成形技術の創製

 サンドイッチ射出成形は、2種類の材料を内外層に複合化できる成形技術として古くから用いられています。通常は、逐次射出制御により内層の樹脂を外部に露出させることなく,いかにその割合を大きくするかに主眼を置いた研究が行われていました。しかしながら金型内での樹脂の流動挙動をより細かく制御することで、新たな複層化成形品を創製できる可能性が見出されつつあります。
 本研究では、逐次射出、同時射出、およびそれらの併用などサンドイッチ射出成形機の特徴である多様な動作パターンを駆使してこの課題に挑戦しています。

研究成果

最近の主要研究成果(抜粋)

受賞

  • ・第71回ネットワークポリマー講演討論会 ベストポスター賞(2022年10月)
  • ・第60回日本接着学会年次大会 ポスター賞 (2022年6月)
  • ・第33回成形加工学会年次大会 ポスター賞 (2022年6月)
  • ・第28回成形加工シンポジア’20 ベストポスター賞 (2020年12月)

特許

  • ・特許6201135プラスチック成形品のサンドイッチ成形方法
  • ・特開2018-145310 シラン変性オレフィン系樹脂の製造方法および樹脂シートの製造方法
  • ・特開2014-148616ポリプロピレン樹脂組成物

論文

  • ・International Polymer Processing, Vol. 38, No. 2, pp. 233-243(2023). Effect of Molding History on Molecular Orientation Relaxation during Physical Aging of Polystyrene Injection Moldings.
  • ・Express Polymer Letters, 16, 2 116-129 (2022). Ionic cross-linked methacrylic copolymers for carbon fiber reinforced thermoplastic composites
  • ・日本レオロジー学会誌, Vol.50, No.2, pp.181-187(2022).ポリスチレン射出成形品のエンタルピー緩和に伴う非晶構造変化と耐熱性の関係
  • ・成形加工, Vol.34, No.5, pp.183-190(2022).レーザーラマン分光法を用いたポリスチレン射出成形品の分子配向解析
  • ・International Polymer Processing, Vol. 36, No. 5, pp. 577-585(2021). Relationship between Molecular Orientation Relaxation during Physical Aging and Heat Resistance of Polystyrene Injection Moldings
  • ・材料, Vol. 70, No. 1, pp. 11-16(2021). ポリスチレン成形品の熱処理による動的粘弾性の変化と耐熱性の関係
  • ・科学と工業, 87(9), 319(2013). ポリエチレンナフタレートブレンドによるポリアミド66 の耐候性向上の研究

総解説

  • ・科学と工業, 95(3), 90(2021). ポリプロピレンの大気暴露試験と促進暴露試験との相関
  • ・“初心者向け技術講座 : 射出成形 Vol.1”,プラスチックタイムス, No.129, pp. 6-8, 2021年1月 日本合成樹脂技術協会
  • ・“初心者向け技術講座 : 射出成形 Vol.2”,プラスチックタイムス, No.130, pp. 6-7, 2021年2月 日本合成樹脂技術協会
  • ・“初心者向け技術講座 : 射出成形 Vol.3”,プラスチックタイムス, No.131, pp. 5-6, 2021年3月 日本合成樹脂技術協会
  • ・成形加工, 30(3), 117(2018). カーボンナノチューブの局在化を利用した導電性樹脂の開発
  • ・日本接着学会誌, Vol. 47, No.11, pp. 438-443(2011). 顕微ラマン分光法 : 分子配向測定への応用

著書

  • ・”高分子のミクロ構造と物性、力学的性質、電気的性質、成形加工序論、PVAc・PVA・PVF・PVB、PVC、ABS・AXS、メタクリル樹脂、PE・EVA・EVOH、PP、その他ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリアミド、POM、PC、PPE、PAR、PSF・PES、PEEK、LCP、繊維素プラスチック、配合剤、コンパウンド技術、射出成形、押出成形、吹込成形、熱成形、表面修飾、成形機の周辺機器、CAEによる成形技術の高度化、発泡プラスチック、ポリマーアロイ、電気・電子材料、輸送機器、包装材料、プラスチックの分析、プラスチックの試験法、プラスチックのリサイクルなど(分担53/103項目)”,プラスチック読本,第22版,2019年6月 プラスチックスエージ
  • ・”射出成形における異方性の発現とラマン分光法による評価”, 高分子の残留応力対策,p.259-268,2017年2月 技術情報協会

外部資金

  • ・日本学術振興会 科研費(基盤C) 2023-2025年度
  • ・スズキ財団 科学技術研究助成(若手) 2023年度
  • ・JST CREST 機能集積型バイオベースポリマーの創製・分解・ケミカルリサイクル 2021-2026年度
  • ・JST 未来社会創造事業 2019-23年度

連絡先 9:00~12:15/13:00~17:30(土日祝・年末年始を除く)

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  • 武内 孝【問合せ担当者】
    takeuchi★orist.jp
  • 東 青史【問合せ担当者】


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