表面粗さの測定
1 表面粗さとは
精密測定における「表面粗さ」とは、物体表面の細かい凹凸の程度を評価する指標です。単に見た目のキレイさを表すだけでなく、物体表面の機能に関係する値です。例えば表面粗さの値が大きいと、摩擦抵抗が大きくなったり、気密性・油密性が悪くなるといった状況が発生します。
2 粗さとうねり
物体表面にはさまざまな周期の凹凸が存在していますが、表面の断面形状を波としてみたとき、最も長い波長の成分がいわゆる“形状”です。次に長い成分が“うねり”、それらより短い波長の成分が“表面粗さ”となります。“形状”としては呼び形状を最小二乗法を用いて除去します。次にデジタルフィルタ(ガウシアンフィルタ)を適用して“うねり”を取り除くことによって評価対象である粗さ曲線を求めます。ここで“うねり”と“粗さ”の分離には、日本産業規格JIS B0633に定められた基準長さ(=カットオフ値)を用います。
3 測定方法
表面粗さの測定方法には大別して接触方式と非接触方式があリます。従来から主流であり技術の蓄積も豊富であるのが接触式による測定です。先端半径数μm程度のダイヤモンド製のスタイラス(触針)で表面をなぞって断面形状を取得します。一方、光等を用いて行うのが非接触式の測定となります。
4 パラメータ
表面粗さの程度を表すパラメータには、多くのものがあります。それらは、JIS B0601で規定されています。規格の改訂に伴って内容が変わってきており、ISO規格に合わせるためにそれ以前と大きく変わった2001年の改正のあと、2013年に少し変更が加わったものが現行規格です。多くのパラメータの中でもよく用いられるのが、算術平均粗さRa(粗さ曲線の高さの絶対値の平均)と最大高さ粗さRz(粗さ曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値の和)です。(このRzは、2001年版より前の規格では、“十点平均粗さ”という別のパラメータを表していましたので、古い図面の表記等には注意が必要です。)
5 二次元評価から三次元評価へ
現在、表面粗さは一断面の評価である二次元評価が主流ですが、より多角的な評価を行うことができる三次元評価が行われるようになってきています。そのための規格の整備も順次始まっています。三次元的に評価するには短時間で多数のデータを取得する必要があるため、今後は非接触式の測定が主流になっていくとも考えられます。
参考文献
日本産業規格
JIS B0601 製品の幾何特性仕様(GPS) ―表面性状:輪郭曲線方式ー用語、定義及び表面性状パラメータ
JIS B0633 製品の幾何特性仕様(GPS) ―表面性状:輪郭曲線方式ー表面性状評価の方式及び手順
JIS B0681-2 製品の幾何特性仕様(GPS) ―表面性状:三次元ー第2部:用語、定義及び表面性状パラメータ
JIS B0681-3 製品の幾何特性仕様(GPS) ―表面性状:三次元ー第3部:用語、仕様オペレータ
JIS B0681-6 製品の幾何特性仕様(GPS) ―表面性状:三次元ー第6部:表面性状測定方法の分類