地方独立行政法人大阪産業技術研究所 - 当法人は、(地独)大阪府立産業技術総合研究所と(地独)大阪市立工業研究所が統合し、平成29年4月1日にスタートしました。研究開発から製造まで、企業の開発ステージに応じた支援を一気通貫で提供し、大阪産業の更なる飛躍に向け、大阪発のイノベーションを創出します。

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【論文掲載】ロサノフ博士の提唱から116年―単糖の構造を体系化する汎用モデルを確立

糖研究者M.A.ロサノフ氏(M.A. Rosanoff)は1906年に単糖の基本的な構造関係を示すRosanoff dialog(図1)を発表しました。しかし、図に示されるように単糖の構造の違いは非常に複雑で、理解するのは容易ではありません。そのため、これまでにもさまざまなモデルが提唱されてきましたが、複雑すぎたり汎用性が低かったことから、広く受け入れられるには至っていませんでした。今回、単糖の構造を包括的に整理・理解できる新しいモデルを、伝統ある糖質研究誌として高い評価を受けている『Carbohydrate Research』に発表しました。

今回提唱した 「Kiryu Hexose Matrix (桐生 六炭糖 マトリックス)」(図2)は、単糖を

  • C-2位とC-5位の水酸基の配向の組み合わせ
  • C-2~C-5位の水酸基の対称性
    という2つの要素で整理し、4種類に分類するものです。

本モデルを用いることで、

1. 単糖同士のエピマー(水酸基の配向)の関係(図3)

2. 糖アルコールなど二つの同義名を持つ化合物の対応関係(図4)

3. 単糖誘導体のC-1位とC-6位が反転した生成物の名称(図4)

4. アルドースとケトースの構造関係
といった、単糖の構造理解に欠かせない情報を整理・可視化することができます。

これまで、単糖の構造式を描いたり、構造式から名称を同定したりすることは容易ではありませんでした。さらに、図3を用いれば、C-2~C-5位それぞれに右向きまたは左向きの水酸基をもつ D-あるいは L-allose を基準として、構造式から糖の名称を容易に特定でき、逆に名称から構造式を描くことも可能になります。また、五炭糖の関係を整理した 「Kiryu Pentose Matrix (桐生 五炭糖 マトリックス)」 も併せて提案しました。

これらのマトリックスは、糖の構造の本質をとらえているため、さまざまな糖の変換反応を説明・補強することができます。例えば、香川大学名誉教授 何森 健 氏が提唱した 「Izumoring」 は、単糖間の変換反応を網羅的に示した画期的なモデルですが、今回提案した 「Izumori-Kiryu Matrix」(図5)は、それをさらに単純化するとともに、エピメリゼーション(水酸基の配向変換)の概念を組み込むことで、より強力なツールとなっています。

本研究で提案したモデルは、糖の学習や研究に広く活用できると期待されます。糖について学ぶ学生にとっては構造理解を深める助けとなり、糖質研究者にとっては新しい構造モデルの提案や新規反応経路の発見につながる可能性を秘めています。

〇研究題目

Kiryu Hexose and Pentose matrix: A comprehensive model of Epimers, structures, and C-1/C-6 inversion products for Hexoses and Pentoses
(桐生ヘキソース・ペントース マトリックス:単糖の構造やエピマー関係、C-1/C-6反転を整理した包括的モデル)

〇執筆者および掲載論文

Takaaki KIRYU*, Hiroaki TATSUOKA, and Motohiro SHIZUMA
Carbohydrate Research, 2025,

https://doi.org/10.1016/j.carres.2025.109683

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