【論文掲載】共同研究成果 (アメリカ化学会発行「Chemistry of Materials」)
環境技術研究部 丸山 純 先進炭素材料研究室長が責任著者として執筆した論文が、材料科学分野の主要な学術誌の一つとして高い評価を受けているアメリカ化学会発行の論文誌「Chemistry of Materials」に掲載されました。
〇論文題目
Role of Manganese Oxide Nanosheets in Pyrolyzed Carbonaceous Supports for Water Oxidation
(熱分解して生成した炭素質基材上でのマンガン酸化物ナノシートの水分解における役割)
〇執筆者および掲載論文
André Wark, Thorsten O. Schmidt, Richard W. Haid, Regina M. Kluge, Shinya Suzuki, Zyun Siroma, Egill Skúlason,* Aliaksandr S. Bandarenka,* Jun Maruyama*
Chemistry of Materials, 2025, 37, 4639−4651
〇共同研究先
アイスランド大学、ミュンヘン工科大学、東京大学、産業技術総合研究所
〇概要
自然界では光科学系IIと呼ばれるタンパク質が光合成における水分解、酸素発生(OER)を担っています。そのタンパク質中にはマンガン酸化物クラスターがありOERの触媒活性点になっています。一方、効率の良い人工のOER触媒はコストの高い貴金属がベースの酸化物です。気候変動抑制への貢献を考えると、入手が容易で大量に得られるOER触媒の開発が重要です。本研究では、鉄フタロシアニン由来炭素質薄膜(CFePc)を高配向性熱分解黒鉛(HOPG)に被覆して基材とし、あらかじめ合成したマンガン酸化物のナノシート(MnO2NS)と複合化することで、生物学的触媒を模擬し、かつ、複合化によるOER反応促進を図り、自然界のように貴金属を使用しない、かつ効率的なOER触媒設計の指針を得ることを目指しました。電気化学的ノイズ走査型トンネル顕微鏡(EC-STM)という最新の技術と、第一原理計算(DFT)によるシミュレーションによって、OERはナノシートエッジで優先的に進行し、かつ基材のCFePcと相互作用してOERが促進されることが解明されました。この成果をまとめた論文が学術誌Chemistry of Materialsに掲載されました。

論文はこちら:https://doi.org/10.1021/acs.chemmater.5c00212
問い合わせ先
大阪産業技術研究所 環境技術研究部 先進炭素材料研究室
丸山 純 maruyama★orist.jp (★を@に替えてください)