研究所報告(No.26)
平成24年度大阪府立産業技術総合研究所(現・和泉センター)報告(No.26)について紹介しています。
本号では、技術報告5編、技術論文3編、他誌掲載論文等概要60件、口頭発表概要169件、平成23年度産技研研究発表会45件、および産業財産権23件を掲載していました。
このページでは、技術報告、技術論文の一覧とその概要を掲載しております。
また技術報告、技術論文は全文をPDFファイルでご覧いただけます。
※こちらに掲載されている情報は、発行当時の内容をそのまま掲載しているため、技術内容、保有機器、組織名、担当者などが、現在のものとは異なる可能性がありますのでご了承ください。
(平成24年9月 発行)
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①表紙~46p<3,044KB> ②47p~88p<2,071KB> ③89p~裏表紙<1,376KB>
テーマ一覧
技術報告
1 | 蓄積疲労スペクトルを用いた振動試験条件の作成と輸送環境の分析 | 津田和城・中嶋隆勝・山内佳門・井上良隆 |
2 | MEMS技術を用いた圧電型超音波センサの開発 | 田中恒久・金岡祐介・宇野真由美・村上修一 山下 馨 |
3 | 鉄が誘発した各種工業製品のトラブルに対する原因解析 -繊維製品を中心に- |
浅澤英夫 |
4 | 法人運営システム導入と所内システム連携 | 新田 仁・石島 悌・平松初珠・中西 隆 |
5 | 金属分析における考え方・分析法と分析事例 -品質管理,クレーム処理,製品開発等へ向けて- |
岡本 明 |
技術論文
1 | ジオシンセティックスの高速引張り特性に関する研究 | 西村正樹・赤井智幸 |
2 | レーザ合金化による低炭素鋼の局所的な表面硬化法 | 山口拓人・萩野秀樹・武村 守 |
3 | 湿式酸化分解のための水溶性鉄系触媒の開発 | 林 寛一・中島陽一 |
技術報告及び技術論文概要
技術報告
蓄積疲労スペクトルを用いた振動試験条件の作成と輸送環境の分析 |
津田和城・中嶋隆勝・山内佳門・井上良隆 |
現在さまざまな業界で振動試験が行われ,振動によるトラブルが事前に調査されている.しかし現在の試験精度は十分とは言えず,市場トラブルや過剰設計を完全に防止できていない.試験精度を向上していくためには,振動によって製品にかかる負荷を正確に把握する必要がある.これまでのマイナー則を用いた方法では,製品への負荷に対して振動の振幅や時間は考慮できるが,振動数は考慮できなかった.そこで新たな評価基準として,振動数ごとに製品への負荷を把握できる蓄積疲労スペクトルを提案した.本基準は輸送環境と等価な試験条件の作成や輸送環境の分析に利用できると考えられているが,実際に利用できるかは十分検討されていない.そこで本基準を用いて,実際の輸送環境と等価な試験条件の作成や分析ができるかを検討した.さらに分析を容易にするために,本基準の区間積分を試みた.その結果本基準の利用により,輸送環境と同程度の厳しさの試験条件を作成できることが確認できた.また区間積分値の利用により,どの道路やどの経路が製品にとって厳しいのかを容易に把握できることがわかった。本報告では以上の内容について実データを示しながら解説する. |
詳細はこちらから<PDF:2588KB> |
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MEMS技術を用いた圧電型超音波センサの開発 |
田中恒久・金岡祐介・宇野真由美・村上修一・山下 馨 |
自動車のバックソナーやロボットの障害物検知センサとして,超音波センサが用いられている.従来型の超音波センサは,バルク型の単体センサが一般的である.我々はMEMS技術を用いて作製することにより,超音波センサの小型化,アレイ化を行った.作製した超音波センサは,圧電材材料を含む薄膜構造である.振動膜が数ミクロンの薄膜であるため,超音波の発信は難しく,受信専用のセンサであるが,超音波が入射すると,薄膜部が振動し,圧電効果により電気信号が出力されて物体が検知されるしくみである.また,圧電型MEMSセンサとしては,感度が低く,共振周波数のばらつきが大きいことなどの課題を見出したが,センサ構造を改善することにより,高感度化,共振周波数特性の改善を図ってきた.以上の内容について,技術報告として解説する. |
詳細はこちらから<PDF:2105KB> |
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鉄が誘発した各種工業製品のトラブルに対する原因解析 -繊維製品を中心に- |
浅澤英夫 |
繊維製品を主とする各種工業製品の製造,流通,消費過程におけるトラブル(変色,異物付着,変形,破損等)に対して,試薬の色の変化を利用する呈色反応や炎色反応などの化学分析,及び,フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)や蛍光X線分析計(EDX)などの機器分析により原因解析を行うことで,原因物質の特定を行ってきた.本報告では,長年にわたって蓄積した高度な分析技術を駆使して,多くのトラブルの原因を解析した結果,原因物質として“鉄”が特定できた事例に関して,トラブルの様態とその解析手法について報告する.とくに,屋根からの水滴によるシーツの黄変について,チオシアン酸カリウムと塩酸蒸気を用いた呈色反応により,黄変部分から鉄が同定されたことから,水滴に含まれる鉄の酸化(鉄さび)による黄変と推測された事例や,ヒノキチオールによる抗菌加工を施した下着の黒変について,呈色反応と蛍光X線分析により,黒変部分から鉄が同定され,ヒノキチオールと鉄が形成したキレート錯体による黒変と推測された事例などについて詳述する. |
詳細はこちらから<PDF:4809KB> |
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法人運営システム導入と所内システム連携 |
新田 仁・石島 悌・平松初珠・中西 隆 |
2012年4月に大阪府立産業技術総合研究所は地方独立行政法人に移行し,新たなスタートを切った.これに伴い,これまで,大阪府庁の総務事務システムによって管理していた出張休暇管理や財務管理などの総務関係の業務について,新規導入される法人運営システムにより管理することになった.総務事務システムは大阪府庁イントラネット上に配置されていたが,法人運営システムは産技研イントラネット上に配置することとなった.これまで,職員は普段,産技研イントラネット上の端末を利用しているにもかかわらず,総務関係の手続きを行う際には,総務事務システムが利用可能な大阪府庁イントラネット接続端末のある場所まで移動する必要があった.しかし,法人運営システムへの移行後は,産技研イントラネット端末から総務関係の手続きが可能になり,職員の業務効率の向上に寄与できた.また,産技研の情報分野職員が独自開発した所内システムと法人運営システムのデータ連携が可能になり,顧客情報と財務情報の連携など新たなメリットも生まれた.本稿では,これらを実現するに至った経緯やソフトウェア開発の内容などを解説する. |
詳細はこちらから<PDF:837KB> |
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金属分析における考え方・分析法と分析事例 -品質管理,クレーム処理,製品開発等へ向けて- |
岡本 明 |
製造業のグローバル化に伴って,海外製の部材,製品が我国市場に多く出回っている.この動きは,円高の影響により,輸入部材・部品の活用がさらに加速すると予想される.海外製の材料や部品の一部では,品質や性能が十分に確保されていないものがあり,それらを活用した製品においては破損・腐食などのトラブル事例が発生し,当所に持ち込まれている.金属材料の材質は,強度・耐食性などの性能を発揮させる要であり,製品の品質確保のために金属分析の重要性が高まっている.金属分析は,材料に含まれる元素の含有量として正確で高精度な分析値を得る必要がある.しかし,その値は分析に使用する機器,測定条件,材料の前処理法,元素の組み合わせなどによって影響を受ける.また,近年では検出の高感度化が進み,試料マトリックスによる妨害も無視できなくなっている.したがって,実分析においては,分析目的を正確に把握し,対象となる材料の特定,分析にあたっての前処理や分離,使用する分析機器ならびに測定条件の最適化などを含め,それらが結果に及ぼす影響も理解してすすめる必要がある.本報告では,金属分析を行うに際しての基本的な考え方ならびに分析方法について概説し,分析の事例について紹介する. |
詳細はこちらから<PDF:7816KB> |
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技術論文
ジオシンセティックスの高速引張り特性に関する研究 |
西村正樹・赤井智幸 |
東北地方太平洋沖地震による未曾有の被害が報告される中,土木構造物の安全,安心に対する意識はますます高まっており,ジオシンセティックス(土木・建設用途に用いられる繊維・高分子材料の総称)に対しても,高度な性能,信頼性がより強く求められている.ジオシンセティックスの力学特性に関しては,用途や適用される状況に基づき,地震発生時をも想定して設計引張り強さなどが決定される.一方,ジオシンセティックスは粘弾性を示す高分子から構成され,力学特性は変形速度に依存する.したがって,大規模地震を考慮した場合,高速変形下での実際の力学特性値や,その速度依存性を評価することは極めて重要である.本研究では,ジオグリッドと遮水シートの2つのジオシンセティックスについて,地震時相当の高速領域を含む種々の速度で引張り実験を行い,力学特性の速度依存性を評価した.その結果,双方のジオシンセティックスについて,力学特性値の速度依存性が確認された.今後,それらの結果を基に,各々の力学特性値の速度依存性を考慮して適切な力学特性値を選定した上で,割増し係数を導入することで,より合理的且つ経済的な耐震設計が可能になると考えられる. |
詳細はこちらから<PDF:1926KB> |
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レーザ合金化による低炭素鋼の局所的な表面硬化法 |
山口拓人・萩野秀樹・武村 守 |
レーザ合金化とは,レーザ照射によって基材表面を局所的に溶融し,溶融領域に他の元素を混合させることで,基材の表面に新たな特性を付与する手法である.本研究では黒鉛粉末を用いたレーザ合金化により,低炭素鋼の表面に炭素を供給し,局所的に高炭素鋼並みの硬さと耐摩耗性を有する合金層の形成を試みた.特に合金層のミクロ組織に着目し,炭素供給量やレーザ照射条件との関係を系統的に調査した.その結果,適切な条件において,均一なラスマルテンサイト組織からなる無欠陥の合金層が得られることが分かった.合金層の硬さは約800 HV,硬化深さは約0.4 mmであり,浸炭で得られる硬化層に匹敵する特性が得られた.広い面積の合金層を得るため,一定間隔でレーザ照射位置を移動させながらレーザ合金化処理を複数回行った後,合金層の上から回折型光学素子を用いてレーザ焼入れを行ったところ,約4 mm幅にわたって均一な硬さを有する合金層を形成させることができた.この手法によって得られた合金層の摩耗特性を,大越式迅速摩耗試験機を用いて調べた結果,母材と比べて耐摩耗性が大幅に向上することが確認できた. |
詳細はこちらから<PDF:3615KB> |
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湿式酸化分解のための水溶性鉄系触媒の開発 |
林 寛一・中島陽一 |
環境意識の高まりから揮発性有機化合物(VOC)や農薬など環境中有害有機化合物の無害化が叫ばれて久しい.なかでも排水処理は様々な産業活動に関わる課題のひとつである.これまで我々は,「持続可能な社会」を目指し,安全・安心な環境技術の開発を行うため,鉄を用いる水溶液中有機化合物の酸化分解処理法に関する研究を行ってきた.鉄は地球上に比較的豊富にある元素である.フェントン反応と呼ばれる技術は,Fe2+と過酸化水素との反応から生成する,強力な酸化剤のOHラジカルを利用する簡便かつ低コスト酸化分解処理法としてよく知られている.さらに,我々はこの反応の変法である,III価鉄種(鉄サビに類するもの)を用いる方法についても研究も行ってきたが,これらの方法は,鉄残渣処理や反応剤の水不溶性が原因による低反応効率といった課題があった.そこで,本稿ではこれらの諸問題を解決するために水溶性金属酸化物であるヘテロポリオキソメタレートを用い,水に可溶な鉄酸化触媒の合成を行い,その酸化還元能ならびに水中有機化合物としてベンゼンの分解について研究した結果を報告する. |
詳細はこちらから<PDF:576KB> |
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