地方独立行政法人大阪産業技術研究所 - 当法人は、(地独)大阪府立産業技術総合研究所と(地独)大阪市立工業研究所が統合し、平成29年4月1日にスタートしました。研究開発から製造まで、企業の開発ステージに応じた支援を一気通貫で提供し、大阪産業の更なる飛躍に向け、大阪発のイノベーションを創出します。

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研究所報告(No.22)

平成20年度大阪府立産業技術総合研究所(現・和泉センター)報告(No.22)について紹介しています。

本号では、技術報告5編、技術論文7編、他誌掲載論文等概要70件、口頭発表概要192件および出願特許11件を掲載していました。

このページでは、技術報告、技術論文の一覧とその概要を掲載しております。
また技術報告、技術論文は全文をPDFファイルでご覧いただけます。

※こちらに掲載されている情報は、発行当時の内容をそのまま掲載しているため、技術内容、保有機器、組織名、担当者などが、現在のものとは異なる可能性がありますのでご了承ください。

 

(平成20年9月 発行)


冊子全体のPDFはこちら
表紙~46p<2,376KB> ②47p~116p<3,873KB> ③117p~裏表紙<1,471KB>

 

テーマ一覧

技術報告

1 残留応力とX線応力測定法 小栗泰造
2 複合微粒子の調製と応用 木本正樹
3 直売所における青果物栽培履歴管理システムの開発 竹田裕紀・新田 仁
4 高出力半導体レーザを用いた鉄鋼材料の焼入れ 萩野秀樹・宮田良雄
5 ニューラルネットワークを用いた電子線描画のドーズ量決定手法 森脇耕介・佐藤和郎・福田宏輝・四谷 任

技術論文

1 ポリシキロサン製光学素子の複製 櫻井芳昭・佐藤和郎・福田宏輝・四谷 任
2 段差乗り越え機構の開発とシルバーカーへの応用 崔 鎭圭・朴 忠植・北川貴弘
中谷幸太郎・杉井春夫
3 高周波誘導加熱によるTi-Al系金属間化合物の燃焼合成コーティング 岡本 明・山川 亮・池永 明・曽根 匠
4 中空陰極放電方式イオンプレーティング法で作製した
チタン窒化物皮膜における内部応力と表面粗さの関係
石神逸男・三浦健一・星野英光・水越朋之
5 タオル製品の快適性 宮崎克彦・馬渕伸明・宮崎逸代
6 有機薄膜トランジスタ向け塗布型ゲート絶縁膜性材料の開発と
トランジスタ特性の評価
村上修一・濱田 崇・戸松賢治・上田祐輔
山崎沙織・永瀬 隆・小林隆史・松川公洋
内藤裕義
7 新規な光硬化性シリコーンの合成とその特性 井上陽太郎・櫻井芳昭

 


 

技術報告及び技術論文概要

技術報告

残留応力とX線応力測定法
小栗泰造
  
残留応力は製品の強度等に影響するため,適切に管理しなければならない.しかし,当研究所に寄せられる相談事案の中には,その認識が不十分であったために招いたと思われる破損トラブル等が少なからず見受けられる.本稿は,企業技術者との情報共有を図るため,技術相談等の際に頻出した技術的事項とこれに関連する情報について解説するものである.まず,残留応力が機械物理的特性に及ぼす影響,残留応力の発生および緩和/低減,ならびにX線応力測定法の測定原理について概説する.測定原理については,この分野の専門家以外の技術者にも理解してもらえるよう,数式を使わずに説明することを試みた.次に,当研究所が受けた残留応力の測定依頼の中からいくつかの事例を選択し,守秘義務に留意してその概要を紹介する.最後に,著者らが開発した応用測定技術-曲面形状部や複雑形状部品の残留応力を測定する技術-について解説するとともに,残留応力測定技術の最近の発展動向を紹介する.
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複合微粒子の調製と応用
木本正樹
  
複合微粒子は,塗料,インク,化粧品などに使われる無機微粒子の沈降,凝集を防ぎ,安定・均一分散させる目的で調製されることが多かったが,最近では,微粒子の複合化の手法を用いて,光の吸収,散乱の制御,磁性粒子,発光性粒子のカプセル化による無害化,など新規機能性材料の開発が盛んに行われている.我々は主として溶液中におけるアルコキシド法によってシリカ-高分子系複合微粒子の調製を行い,多孔性シリカ,超撥水性表面処理剤,カプセル材料などへの応用の可能性について検討してきた.本報告では,一般に知られている複合微粒子の調製法について,いくつかの方法を紹介するとともに,ヒドロキシプロピルセルロースあるいはアクリルシリコーン溶液中,およびコアシェル型高分子微粒子分散溶液中における複合微粒子の調製法について説明し,調製条件と複合微粒子の形態,表面特性などの関係について説明する.
詳細はこちらから<PDF:596KB>
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直売所における青果物栽培履歴管理システムの開発
竹田裕紀・新田 仁
  
最近,輸入食材から不適切農薬成分が検出され,健康への不安から食の安全・安心への関心が高まっている.また,日本国内で栽培される農作物に関しても,消費者はより安全なモノへとの理由で,地産地消あるいは栽培者の顔が見える直売所の食材に対して注目が集まっている.一方,農薬に関しては農薬取締法で厳しくルール化されており,農家であれ家庭菜園であれこれを厳守する義務がある.しかし不注意や知識不足で出荷停止など意図しない状況に追い込まれる場合がある.IT技術やデータベースを駆使すれば,農薬使用時または事前に適正使用か否かを一目瞭然で判定することが可能である.また,簡便に入力できれば農作業記帳の習慣付けにも寄与することが可能である.本開発でこの2つの事柄を実現するために,煩雑な農薬使用基準のデータベース化と入力インターフェースに工夫を凝らし,農薬使用の自動判定と手動を組み合わせたコンピュータと人が補完しあったトレーサビリティシステムを構築して,実用性を高めることができた.
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高出力半導体レーザを用いた鉄鋼材料の焼入れ
萩野秀樹・宮田良雄
  
炭素鋼の表面焼入れに高出力半導体レーザを用いた場合の焼入れ特性について検討を行った.半導体レーザは従来のレーザと比べ,効率が高く,操作やメンテナンスも容易であり,焼入れ等の表面処理への利用が期待されるレーザである.レーザを用いた焼入れは,表面焼入れであり,冷却剤が不要,大気中で処理が可能,ひずみが小さく処理速度も速いといった利点がある.試料は機械構造用炭素鋼とし,レーザ光の照射パラメータと硬化部の形状,硬さとの関係について調べた.レーザ光照射パラメータとして,レーザ光走査速度,試料表面からレーザ光の焦点位置間の距離を変化させた.炭素鋼S45Cを用いた場合,硬化層の最大幅は6.0 mm,最大深さは1.2 mm,硬さはどの条件においても約700 HVであった.また,試料の炭素量,前処理状態と硬化層の形状,硬さとの関係についても調べた.その結果,炭素量が多いほど,硬化層は大きくなり,硬度も高いという結果が得られた.また,焼入れ前の試料の組織の状態,試料の表面状態,試料の炭素量と硬化層の形状,硬さとの関係についても調べた.その結果,あらかじめ焼入れ焼戻しを施した試料は硬化層全体の硬さがほぼ均一であるという結果や炭素量が多いほど,硬化層は大きくなり,硬度も高いといった結果が得られた.
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ニューラルネットワークを用いた電子線描画のドーズ量決定手法
森脇耕介・佐藤和郎・福田宏輝・四谷 任
  
超微細加工方法の一つである電子線リソグラフィによって,アナログレジストのマルチレベル作製工程の簡略化を目的として,設計形状を得るための最適な電子線量(ドーズ量)分布を,ニューラルネットワーク(以下NN)による学習・想起によって導出することを試み,良好な結果を得た.計算機ホログラム(CGH)の厚み分布(設計形状)を予備的に一度加工し,そのときの形状測定結果(入力)とドーズ量分布(出力)との対応を,3層の階層型NNに誤差逆伝搬法を学習アルゴリズムとして学習させた.設計形状に対する最適ドーズ量分布を学習済みNNに想起させ,再加工したところ,設計形状により近い加工結果が得られ,ドーズ量分布の近接効果補正に利用できる可能性が認められた.通常,ドーズ量の最適分布条件は反復的試行錯誤が必要であるが,提案手法では予備加工と本加工のみで工数を低減できる.熟練や職人的技能に依存しない効率的な簡便手法への展開が考えられる.
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技術論文 

ポリシキロサン製光学素子の複製
櫻井芳昭・佐藤和郎・福田宏輝・四谷 任
  
電子線レジストは,電子線露光技術に用いられる電子線に感度を持ったレジスト材料であり,感度の向上による露光時間の短縮が課題となっている.そのため,これまでに,ポリシロキサン化合物からなる高感度な電子線レジストを開発し,本レジストを利用した回折光学素子の作製を行ってきた.しかしながら,回折光学素子を低コストで作製するためには,階段構造等の断面形状を有する微細パターンを持つ金型を利用した注型成型,射出成型などの量産化に適した作製法が有効であり,そのための金型が必要となる.そこで,本報告では,光学素子の大量生産を進めるため,新規レジストを用いた光学素子から金型を作製し,レプリカを簡単に得る方法を検討した結果を述べる.具体的には,レジストとして新規ポリシロキサン化合物を用い,電子線描画によりパターニングし,電解めっきを行うことにより微細パターンを要する金型が得られるプロセスおよびその特徴について詳細に説明する.
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段差乗り越え機構の開発とシルバーカーへの応用
崔 鎭圭・朴 忠植・北川貴弘・中谷幸太郎・杉井春夫
  
高齢化社会が進み,歩行支援を目的とした様々な福祉用具が利用されている.手押しタイプの歩行支援機器であるシルバーカーも,足腰の弱い高齢者に良く利用される器具の1つである.一方,筆者らが行なった市販のシルバーカーを用いた段差の乗り越えの実験では,1.5 cm程度の段差でも乗越えが困難であり,これより低い段差の乗越えためにも相当の力が必要とされ,段差乗り越え自体が高齢者においては大きな負担となることが分かっている.また,段差乗り越えに失敗した時には,衝突による衝撃や前向きのモーメントにより歩行者が転倒する危険性も考えられる. 本論文では,歩行機能が低下した高齢者の安全な歩行の支援を目的とした,新たな段差乗り越え機構を提案する.まず,段差乗り越え機構を取り付けたシルバーカーの仕様について説明する.次に,本シルバーカーの幾何学的・力学的解析を行い,その性能を明らかにする.提案する機構は,リンクと歯車で構成された簡単な構造により,通常よりも小さい力でより高い段差(3 cm程度)の乗り越えが可能であり,また衝撃を緩和する特性を有する.最後に,応用例として,本段差乗り越え機構にパワーアシスト方式を併用し,公道上にある高い段差でも乗越え可能とした在宅療法患者向けの酸素カートを紹介する.
詳細はこちらから<PDF:516KB>
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高周波誘導加熱によるTi-Al系金属間化合物の燃焼合成コーティング
岡本 明・山川 亮・池永 明・曽根 匠
  
1990年代をピークとして研究開発が積極的に進められてきた耐熱Ti-Al系金属間化合物は脆性であるため,実用化に供されているのは自動車エンジン部品に留まっているのが現状である.本研究では,Ti-Al系金属間化合物の使用用途の拡大を目的として,高周波誘導加熱によって誘起される燃焼合成反応を利用した球状黒鉛鋳鉄基板上へのTi-Al系金属間化合物コーティングを試みた.その結果,Ti-Al系金属間化合物が皮膜に多く生成し,また緻密で接合性の良い皮膜が作製できた.加熱速度を種々変化させたところ,燃焼合成に大きな影響を及ぼし,加熱速度が大きい場合にTi-Al系金属間化合物がより多く生成することがわかった.皮膜の接合強度は,界面に生成する拡散層が適切な厚さの場合に最大の値を示した.したがって,良好な膜質と高い接合強度を両立するためには,加熱速度を適切に制御することが重要である.また,皮膜は基板と比較して高い硬さと優れた耐摩耗性を有しており,本コーティングによって汎用基材の高機能化を図れると考えられた.
詳細はこちらから<PDF:417KB>
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中空陰極放電方式イオンプレーティング法で作製した
チタン窒化物皮膜における内部応力と表面粗さの関係
石神逸男・三浦健一・星野英光・水越朋之
  
基板には表面粗さが最大高さRz≒58~66 nmの高速度工具鋼SKH51を用いた.被覆温度,被覆時間,電子ビーム電流,基板バイアス電圧,ガス圧力,窒素ガス混合比[N2 / (Ar + N2)],蒸発源に対する基板の傾斜角および基板と蒸発源の距離を変化させて皮膜を作製し,それらプロセスパラメータが表面粗さにおよぼす影響を調べた.表面粗さは触針式,皮膜内部応力はX線応力測定法で求めた.皮膜の形態観察は走査型電子顕微鏡,構成相の同定および結晶配向性はX線回折分析法で調べた.圧縮応力によって発生する表面剥離や亀裂などは表面粗さを著しく増大させた.一方,形状欠陥がない比較的平滑な皮膜の場合,表面粗さは構成相や結晶粒度などの材料学的諸特性と一定の関係は認められず,結晶が高度に方位配列した皮膜ほど粗さが減少する傾向を示した.種々の方位を有する柱状晶群で構成された皮膜に圧縮応力が作用した場合,基板に垂直方向の歪みを生じるが,弾性定数の結晶異方性により各柱状晶で歪量が異なり,表面に微少な起伏を引き起こすものと考えられた.圧縮応力と結晶配向性を同時に考慮するとプロセスパラメータにともなう表面粗さの変化を説明できる.
詳細はこちらから<PDF:758KB>
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タオル製品の快適性
宮崎克彦・馬渕伸明・宮崎逸代
  
タオル製品に求められる主たる消費者ニーズは,吸水性とやわらかさである.しかしながら,綿繊維は脱脂により吸水性を高めると風合いがかたくなるため,その両立はむずかしく,タオルの製造において,やわらかさと吸水性のバランスのとれた商品設計が求められている.本報告では,吸水性とやわらかさを要因としたSD法による官能評価試験からタオル製品の快適性について分析評価を行った.評価実験に用いたタオルは,製織段階まで同一条件で作成し,精練条件だけで吸水性に差をつけることで,織物構造要因によるやわらかさへの影響をなくし,不確定要因の少ない評価を可能にした.また,タオルのやわらかさは,圧縮特性,せん断特性を指標として評価を行った.結果,タオルの快適性は,やわらかさよりも吸水性の要因が大きく,吸水性の高いタオルほど快適性評価が高いことが分かった.
詳細はこちらから<PDF:290KB>
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有機薄膜トランジスタ向け塗布型ゲート絶縁膜性材料の開発と
トランジスタ特性の評価
村上修一・濱田 崇・戸松賢治・上田祐輔・山崎沙織
永瀬 隆・小林隆史・松川公洋・内藤裕義
  
有機材料から構成される薄膜トランジスタ(有機TFT)は,有機材料の特徴である軽量,柔軟性,耐衝撃性といった形状フレキシビリティを有するとともに,印刷技術を応用して電子回路の大面積化,プロセスの低コスト化を可能とする.したがって、フレキシブルディスプレイ,電子ペーパー等の表示デバイス分野,情報タグ,携帯電子機器などへの応用が期待され,近年研究開発が活発に行われている.本研究では,有機TFT向けゲート絶縁膜としてポリシルセスキオキサンに着目し,ゾルゲル法により合成を行った.また,シアノエチル基を導入することにより,高誘電率化を検討した.さらに,合成したポリシルセスキオキサンを使って有機TFTを作製し,そのトランジスタ特性の評価結果により,ゲート絶縁膜としての性能,有機半導体/ゲート絶縁膜界面の影響などについて知見を得たので報告する.
詳細はこちらから<PDF:808KB>
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新規な光硬化性シリコーンの合成とその特性
井上陽太郎・櫻井芳昭
  
省資源・省エネルギーの観点から光および電子線硬化技術は近年大いに注目をあび,フォトレジスト・インキ・塗料・接着剤の分野で大いに活用され,幅広い産業での要素技術となっている.しかしながら,光重合開始剤の分解物による毒性や臭気が安全衛生上の問題となっている.作業者の環境を改善するためにもこの問題を解決する必要がある.その解決策として高分子化光重合開始剤や光重合開始剤なしで重合する材料の開発が試みられている.そこで本稿では光重合開始剤がなくても紫外光照射により重合することが知られているマレイミドに着目し,マレイミド基を有するシロキサン・シルセスキオキサンおよび,これらの共重合体を合成し,さらにこれらの光硬化について検討した結果について報告する.
詳細はこちらから<PDF:240KB>
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