金属分析の際の流れと、試料の形状、重量について
当研究所には日々、多種多様な金属分析の相談が寄せられており、それぞれの案件に応じて最適な分析手法をご提案しています。
こちらのページでは、金属分析の流れや試料形状についての注意点をまとめました。
分析申込みの際の参考にしてください。
①材質がまったく不明な場合
分析する試料の材質に関して、JISのどの材料に相当するなどの情報や、購入時のミルシートなどがない場合、蛍光X線分析装置を用いて含まれる元素や、その大まかな量の分析が必要となります。
蛍光X線分析装置の試料ホルダを右図にしめします。このホルダに入る形状、直径47mm、厚さ20mm程度の試料の場合、お預かりした資料をそのまま測定します。試料が試料ホルダに入らない場合、当所で切断できるものについては試料調製(別途料金)の上、測定を実施します。
②材質が想定されている金属(スパーク放電が適用できる場合)
分析する試料の材質に関して、相当するJISの番号や、購入時のミルシートなどが存在する場合、蛍光X線分析を省略して定量分析を実施します。
JIS規格に相当する一般的な鉄鋼、銅、アルミ、亜鉛などの合金のうち、当所が必要な検量線標準試料を保有しているものについては、スパーク放電発光分析で定量分析を実施します。
主要材料には対応しておりますが、各成分の対応範囲に関しては、御相談ください。
スパーク放電発光分析を実施する場合に必要な、試料形状・大きさの制限について下記に示します。
スパーク放電発光分析装置は、タングステン電極と試料との間にスパーク放電を発生させ、そのときに生じる各元素の発光スペクトルの波長と強度を測定することにより定量分析を行います。
スパーク放電発光分析装置の試料ステージには、右図のように、中央に直径12mmの穴(試料孔)が開いており、その中にタングステン電極が配置されています。
分析を行う際には、下図のように試料孔を分析試料でふたをする形でふさぎ、アルゴンガスを流しながら、タングステン電極と試料との間で放電を発生させます。
孔の封止が不十分でアルゴンガスが漏れてしまうと、放電が正常に行われません。そのため、分析試料には直径12mmの穴をふさぐことのできる直径14mm以上の平らな面が取れる大きさが必要です。
試料ステージの大きさは直径約100mmです。これより大きな試料でも、切断加工などによって、ステージ内に設置できる場合はスパーク放電分析を実施できます。
試料が薄すぎる場合、スパーク放電によって発生する熱で分析試料が溶解してしまい、分析が正常に行われません。試料の厚みは2mm以上必要です。
また、浸炭・脱炭・めっき・表面処理部・腐食部など、素地と成分が異なる層が表面にある場合、これらを除去して素地部分の分析を行います。
以上をまとめますと、スパーク放電発光分析を行うための試料条件は、
1. 必要な標準試料を当所が保有していること
2. 直径12mmの穴をふさぐための、直径14mm以上の平面部分があること
3. 2mm以上の厚みがあること
4. 表面処理(変質)部を除去した素地部分が得られること
です。
大きさのイメージとしては、マッチ箱くらいの大きさ、大きくても御徳用マッチ箱くらいの試料で、平面が取れる試料でしたら、試料調整なしで分析することができます。
*試料調整が必要な場合は、別途調整料をいただくことがあります。
*大きさや厚みがぎりぎりの場合、試料形状が不明の場合は別途ご相談ください。
③材質が想定されている金属(スパーク放電が適用できない場合)
試料を酸分解して分析を行うICP発光分析や、試料を燃焼させて赤外線の吸収量から炭素、硫黄を分析する装置での定量分析、もしくは特殊な材料の場合はそれぞれの材料に合わせた化学分析の実施となります。
ICP分析、炭素・硫黄分析を行う場合、評価する素材部分がそれぞれ最低 1g 必要です。
化学分析の場合、実施する手法に応じて試料形状・必要量がそれぞれ変わります。あらかじめ、当方にご相談ください。
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