3Dスキャナ測定が難しいケース
当研究所が保有する3Dスキャナ「ATOS Core」は、LEDプロジェクターから縞状パターン光を投影し、その縞模様をカメラで読み取ることで対象物の形状を測定します。
したがって、以下のような測定物については、測定精度が著しく低下する、あるいは、形状測定を行うことができません。
深穴・溝
形状測定を行うには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 測定物表面に縞状パターン光が投影されていること
- カメラの撮影範囲に入っていること
したがって、深穴や溝など、測定光が届きにくい、あるいはカメラで撮影しにくい部位は形状データの取得が困難です。
測定状況にもよるため、あくまでも目安ですが、穴の場合は、直径と同等の深さまで、溝の場合も、幅と同等の深さまでであればなら測定可能です。
鋭利なエッジやポイント
3Dスキャナは曲面形状の測定には適していますが、エッジ(線)やポイント(頂点)といった「角部」の測定が苦手です。
3Dスキャナは、投影した縞模様をデジタルカメラで読み取り、画像処理を行うことで縞の形状から奥行きを計算します。
立体形状は多数の点から構成される点群データとして読み込まれますが、当所のATOS Core 200の場合、解像度は0.08mmです。そのため、急激な形状変化は取りこぼしてしまい、結果として角が潰れてしまいます。
Core 80は解像度0.03mmのため細かい形状変化にも対応できますが、その代わり測定範囲が狭いため、長辺が100mmを超える測定物には適しません。
センサヘッド | 一度に測定できる範囲 | 解像度 |
---|---|---|
ATOS Core 80 | 80×60mm 焦点深度60mm | 0.03mm |
ATOS Core 200 | 200×150mm 焦点深度150mm | 0.08mm |
ATOS Core 300 | 300×230mm 焦点深度230mm | 0.12mm |
このような理由で、薄いバリや、鋭利な角、細かい刻印、ねじ山のような部位はディテールが失われてしまいます。
特に雌ねじ部は、深穴とエッジが複合した要素であり、うまく測定が行えません。
反射・透過する素材
3Dスキャンを行うためには、LEDプロジェクターから投射した縞状パターン光が測定物表面に映る必要があります。
映画のスクリーンのような、艶がなく明るい色調の面は高精度に測定できる一方で、
塗装面やプラスチック、機械加工された金属表面といった光が反射する光沢面は、ノイズが発生して測定面に細かい凸凹が現れたり、表面形状を測定できないことがあります。
特に艶ありの黒色(ピアノブラック)は測定が困難です。
また同様の理由で、ガラスやアクリル樹脂などの透明な素材も3Dスキャナが苦手とする測定物です。
このような場合は反射防止の粉末スプレーを吹き付けることで光を散乱させ、測定性が改善されます。
粉末スプレーは拭き取りや水洗いで除去できますが、塗膜には0.01~0.05mmの厚みがあり、測定寸法に影響を及ぼします。
3Dスキャナ測定に関するご相談
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