◆報道発表日:令和8年3月16日
半導体基板上で非鉛圧電体の性能向上を実証
~汎用成膜法で多数の条件を同時に評価し実現~
この度、大阪産業技術研究所 電子・機械システム研究部 村上修一室長、山根秀勝研究員と、大阪公立大学大学院工学研究科 吉村 武准教授他との共同研究成果について報道発表いたします。
【研究概要】
圧電材料は力を加えると電気が生じ、電気を加えると形が変わる性質を持つ材料で、圧力センサーやイヤホンなどに広く用いられています。鉛を使用しない圧電材料として注目されるビスマス鉄酸化物(BiFeO3、BFO)※1は、圧縮の力により圧電性能が向上することが報告されていましたが、この効果は実用的な半導体基板上では適用が難しいと考えられていました。本研究グループは、引張ひずみ※2を積極的に利用するという発想により、半導体基板上でもBFOの構造相転移※3を誘起でき、圧電特性を向上させることに成功しました(図1②)。本研究結果により、非鉛圧電材料の実用化を大きく前進させることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月17日に、国際学術誌「Microsystems & Nanoengineering」にオンライン掲載される予定です。
<ポイント>
① 電子デバイス製造で広く用いられるスパッタ法※4を活用し、半導体基板(シリコンウエハ)上に非鉛圧電単結晶薄膜※5を作製。
② 多数の成膜条件を1枚の基板上で同時に評価できる手法(図1①)により、材料特性の最適化を効率的に実施。
③ 最適化した材料を用いて超小型振動発電デバイスを試作し、5倍の性能向上を実証。
図1:研究の概要:効率的な材料探索と半導体基板上での性能向上
◆報道提供資料
<掲載誌情報>
【発表雑誌】 Microsystems & Nanoengineering (IF=9.9)
【論文名】 Enhanced Electromechanical Coupling in Piezoelectric MEMS Vibration Energy Harvesters via Strain-induced Phase Transition in Mn-doped Bismuth Ferrite Epitaxial Films
【著者】 Sengsavang Aphayvong, Meika Takagi, Kira Fujihara, Yohane Fujibayashi,Norifumi Fujimura, Hidemasa Yamane, Shuichi Murakami, Takeshi Yoshimura
【掲載URL】 https://doi.org/10.1038/s41378-026-01177-5
◆問合せ先
大阪産業技術研究所
法人経営本部 松永(和泉センター 企画部)
TEL:0725-51-2511
<用語解説>
※1 ビスマス鉄酸化物(BiFeO3、BFO):ビスマス(Bi)、鉄(Fe)、酸素(O)からなる酸化物材料。鉛を含まない圧電材料として注目されている。適度な圧電性能と誘電率を持ち、センサーや発電デバイスに適した特性を備える。
※2 ひずみ:材料に外部から力が加わることで生じる変形。圧縮ひずみ(押し縮められる)と引張ひずみ(引き伸ばされる)がある。薄膜では、基板と薄膜の熱膨張係数や結晶格子定数の違いによりひずみが発生し、これが材料の性質を大きく変化させる。
※3 構造相転移:結晶中の原子の並び方(結晶構造)が変化する現象。温度や圧力、ひずみなどの外的条件により生じる。相転移により材料の電気的・機械的性質が大きく変化することがあり、本研究ではこの現象を利用して圧電性能を向上させた。
※4 スパッタ法:固体材料(ターゲット)にイオンを衝突させ、飛び出した原子を基板上に堆積させる薄膜作製法。半導体製造で広く使われる汎用(はんよう)技術。真空装置内で行われ、大面積の均一な薄膜を作製できるため、量産性に優れる。
※5 単結晶薄膜:エピタキシャル薄膜。原子が規則正しく配列した高品質な薄膜。基板の結晶構造に沿って成長させることで、原子レベルで整った構造を実現。多結晶膜に比べて電気的・機械的特性が大幅に優れることが多い。
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