概要
本研究では、軍艦島のコンクリート建造物の調査で発見されたFe3O4からなる保護性さびのラマンスペクトルから観測された未知の特徴(Fe3O4の全対称振動モードに相当するA1gピークだけでなく、700-800cm-1以上の高波数側に未知のピークが存在する)について研究した。この未知のピークの特徴として、入射光強度が増加すると、その強度が本来のA1gピークよりも強くなる。この現象は、ラマン分光ではこれまで報告されていない。そこで、この現象の物理的意味を検討した結果、アルブレヒトの振電相互作用理論を拡張することで説明できることを示した。さらに、同様の特徴は、他の材料についても過去の文献で観察されていることを指摘した。したがって、本研究で得られた成果は、保護性さびだけでなく、他の材料にも適用できる可能性がある。