概要
リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化に向けた取り組みとして,新規負極活物質材料であるシリコン系材料の利用が注目されている.シリコンは従来材料(黒鉛)の10倍近い理論容量を有するが,その代償としてサイクル特性に劣る問題点があった.我々は,シリコン負極活物質の集電体からの剥離というマクロ的な劣化要因に着目して研究を進めた.本稿では,各種負極用バインダについて概説した後,開発したケイ酸塩系無機バインダのサイクル特性向上効果や,その作用機構に関する考察を報告する.さらに,無機バインダの用途展開を目指した事例として,正極活物質粒子のコーティング剤としての適用事例についても紹介する.