地方独立行政法人大阪産業技術研究所
理事長
大阪産業技術研究所 令和6事業年度のスタートにあたり
2017年の統合、新法人発足により、私どもは西日本最大の鉱工業系公設試験研究機関となりました。全国の公設試で一、二を争う規模となり、統合によるスケールメリットは大きく、「技術相談」、「依頼試験」、「装置使用」という公設試の基本業務を進めつつ、いわゆるR&Dに相当する共同研究、受託研究やその準備のための基盤的研究をバランスよく実施しています。
産学官連携によるオープンイノベーション推進の視点からは、大阪産業局やMOBIO、大学、金融機関等との連携に加え、独自のプラットフォーム「おおさかグリーンTECHコンソーシアム」の運営を通じて、ニーズ把握や成果の普及、実用化の促進に努めております。また、時代に即した新技術の開発を目指す企業の皆様をサポートするために、電池開発評価センターやEMC技術開発支援センター(電磁両立性評価)、さらには3D造形技術イノベーションセンター(金属3Dプリンターに関する総合技術)および先進電子材料評価センター(Beyond 5G用高周波数域での材料評価)などを整備し運営しております。
今後も、得意とするR&D力を活用する形で、地域の産業振興に一層貢献してまいります。技術相談窓口のワンストップサービスもご利用いただけるなど、和泉と森之宮の2センター体制を有機的に運用し、和泉と森之宮の研究連携を促進する制度を新設するなど、Under One Roofとしてのシナジー効果を発揮してまいります。
時代に即した新技術のご提供も引き続き重要なミッションです。SDGsに代表される「持続社会の構築」は大きな社会課題です。その中でも、エネルギーや環境に関わるグリーンテクノロジー、健康や長寿に関わるライフテクノロジー、これらを支えるデジタル化(DX)を注視し、地域産業を担う中小企業の皆様がこの流れをチャンスに変えられるよう、ご支援ができればと考えております。エネルギー、環境などの社会課題解決に取り組むべく、本年度は新たに下記4テーマを重点事業に設定いたしました。
◆脱炭素化に貢献する金属接合技術の開発
◆脱炭素に向けたバイオマスガス化発電技術の開発
◆森林資源を有効活用した次世代マテリアルの開発
◆各種材料の海洋分解性評価技術の開発
また、大阪・関西万博(EXPO2025)に向けての準備の総仕上げの時期を迎えております。大阪ヘルスケアパビリオンの「展示・出典ゾーン」で行われるリボーンチャレンジに参画し、新技術開発などに取り組む優れた大阪の中小・中堅企業の技術力や魅力を、国内外へ広く発信するよう急ピッチで準備を始めています。さらにスタートアップ支援については、府下の支援機関との連携をより一層強化し、研究開発や製品の試作・評価などの技術面から支援します。
新型コロナウイルス感染症がもたらしたニューノーマル(新常態)も重要な視点です。我々の生活や働き方、意識が変化しました。例えば「オンライン」や「リモート」が常態化しつつありますが、その先の技術としてアバターロボットやメタバースに対する社会の関心も高まっています。「未来社会のショーケース」を目指す万博を契機に、この流れが加速されることも予想されます。
これらが近い将来の新常態となれば、生活様式、勤務形態、移動形態、さらには都市構造までもが大きく変化する可能性もあります。よく「CHANGE は CHANCE」と言われますが、まさに社会変革時にはそれに伴って必要な新技術ニーズも数多く生まれることでしょう。そういったチャンスを見逃さず産業振興につなげられるよう、柔軟なR&D体制を心がけます。
今後とも、よろしくご利用のほど、お願い申し上げます。
令和6年4月1日
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